稽留流産のこと7

しばらく休んだせいで職場復帰後から慌ただしい。

妊娠週数がかなり早期だったこともあり、妊娠・流産のことは、直属の上司と一緒のチームの責任者にだけ伝えていた。

周りは何の体調不良か知らず、気を使ってくれていたが、笑顔で「ご心配おかけしました。もう大丈夫です!」といえばそれ以上聞かれることはなかった。実際、身体はかなり元気だと感じていた。

そんな感じで普通に過ごしていた中で、思わぬ事故(?)に遭遇。実は職場に、私より少し前に妊娠した女性がいた。すでに安定期の頃。その彼女の姿を久々に見た瞬間、心に大きな波風が立った。人前では普通にできた、当人とも会話できた、が、デスクに戻った瞬間、涙が溢れ出てきてしまいトイレに駆け込んだ。必死に堪える。人に見られるわけには行かない。でも止められなかった。嗚咽を噛み殺しても涙が次から次に出てくる。脳裏には彼女の幸せそうな表情と自分の赤ちゃんのエコー写真が浮かぶ。

ーーあー、私、やっぱりショックだったんだなー

と気付かされた瞬間だった。手術への不安と、それが上手くいった安心感とで、流産自体に対する感情が隠されていたみたい。初めてちゃんと悲しみに向き合えた。カサブタはできたかもしれないけどその下にはヒリヒリ。

マスクとメガネでその後の仕事を何とか乗り切り、帰宅後、夫の前で、今度は号泣した。夜になっても、妊婦の彼女の幸せそうな顔を思い出すだけで涙が止まらない。オイオイ声に出して子供みたいに泣いた。

彼女が羨ましいんじゃない、彼女が元気なのは嬉しい、でも見ると涙が出てしまうんだと言う私に、「わかってるよ。人は人だよ。でも泣ける時は泣いたらいい」といって背中を撫でててくれた。

たぶん、悲しみの感情は箱の中にしまわれていて日常生活の中で開くことはないけれど、彼女の顔を見ると自動的にぱかっと蓋が開いてしまうんだ。カサブタがカサカサに完成するまでは、彼女と会わないようにしようと決めた。


そうやって、全部が以前の通りとはいかないながらも、普通の毎日が始まった。



続く。